🌾『近江里山FW2022』田んぼと会話をする。【プロジェクトレポート】
地域実践領域の助手からみたプロジェクトレポート🌾🌾
稲刈り〜脱穀・籾摺り、田んぼ終い作業 編
『近江里山フィールドワーク』とは…
滋賀県大津市 仰木にて現在、棚田を維持・保全するために「棚田オーナー制度」という、都市住民と共に農作業を行う取り組みがされています。その棚田オーナー田では、昔ながらの手作業での田植え、稲刈り作業(天日干し)脱穀を経験させていただけます。
『近江里山フィールドワーク』プロジェクトでは年間を通して、仰木の生業である稲作と仰木でのフィールドワークを同時に行ってきました。古来から家族や地域の共動で守られてきた生業の姿を知り、これからの里山の暮らしについて思考します。
(担当:加藤賢治 教授・今森光彦 客員教授・大原歩 非常勤講師)
2022年9月25日(日)<第3回 仰木 稲刈り作業 >
棚田オーナー田にて、手作業での稲刈り作業(天日干し)を体験しました。
初夏に田植えをしたものが実り、景色はすっかり様変わりしていました。黄金色に光る稲穂が地面から真っ直ぐ生えているのが本当に綺麗!!
しかし、いざ作業が始まると田植えの時以上に体力が必要だと感じる学生が多かったようです。炎天下なうえ、足元がぬかるんでおり泥に足を取られて歩くだけでも大変。
屈んだり、切ったり、持ち上げたり、結んだりと全身を使う作業がひたすら繰り返されました。
「稲を刈る係」「稲を藁で縛る係」、「稲を持ってくる係」「稲架に稲を掛ける係」と別れて作業するとなるべく早くスムーズに進められると気がついた面々。その内コツをつかんできて、ちょうど良い身体の動かし方を探りはじめます。
とはいえ体力の限界がどんどんやってきて、昔の農家さんたちは、どうやって稲刈りしてたんだろう…と途方もない気持ちに…
稲刈り用の鎌に注目した学生は「鎌の持ち手が長すぎると、全体が重くて疲れやすく、短すぎると力が入らないです。」と教えてくれました。
根元を刈るためにその都度しゃがむので、小さな蜘蛛・バッタ・カエル・亀虫などの様々な生き物の発見を面白っがている人もいました。
参加学生のコメントから
- 普段ならただ身体が疲れたと思うようなことや虫に対してマイナスな気持ちを持つことも全て忘れて作業に黙々と取り組んでいたなと気づいた。疲れよりも達成感から晴れやかな気持ちになれたし、自分の身体に稲を密着させて稲を運んだりしていて虫などへの苦手意識がその時だけなかったし、夢中になって協力して取り組んでいたら身体を使った作業でも楽しく終えることができた。それは、一人での作業ではなくコミュニケーションをとりながら、些細な会話を楽しみながら、皆んなで一つのことに向かって取り組めたからなのではないかと気づいた。
- はさがけ用に稲を結んでいく作業をしていたのですが、指のまめがつぶれてしまうほど結ぶ作業が難しく、昔の人はすごいと感じました。また、去年はさがけをしていた藁を使用することで田んぼに落ちても、土にかえり循環していく、ゴミを出さない、無駄がないはさがけは現代のリサイクル活動の様で、温故知新ではないですけど、昔からの無駄を作らない知恵というものが素晴らしいと思いました。他にも「田んぼの性格」を感じ、その田んぼにあった米作りをしているのは私たちの作品作りにも通じるものがあると感じました。米作りするにあたって、「田んぼと会話をする」というワードもとても素敵だと感じました。
- 稲を束にする時やはさがけの時、去年の藁を使って縛うようにしていて、自然を無駄なく使うという精神に自然へのリスペクトを感じた。
- はさがけは全て自然のものでできるようになっており、自然に優しい循環構造になっていました。わらの頑丈な結び方やはさがけする方角はその地域の人々の知恵だなと感じました。
- 稲を去年刈ってできた藁を使って束ねたり、はさがけも竹や杭、藁縄だけで作ったりと米の稲は無駄なく使われていると感じた。稲を束ねる作業は最初は難しくて上手くできなかったが、だからこそ昔の人は今あるものだけで米を作ろうと様々な工夫を凝らしていたことがわかった。
- 稲刈りをしているときに小さな蜘蛛や、カエルや、亀虫などの様々な生き物がいて稲の中は生き物の集合住宅のようになっているのだと思った。
はさがけ後、上の棚田も含めてずらっと干された稲穂を眺めながら、重労働であったがゆえの達成感を噛みしめ帰路につきました。
そして…次の日には全身の筋肉痛が待っているのです。
2022年10月16日(日)<第4回 仰木 脱穀・籾摺り、田んぼ終い作業>
この日は干していた稲をコンバインに入れて、藁と米に分けました。
「初めて脱穀作業をしました。」と言っている方が多い印象です。
作業自体は、機械(コンバイン)のおかげで1時間くらいで完了です。しかし、コンバインが一台だと作業できる人数や時間が限られてしまったり、機械を使用することによってお米の品質に関わってくる、というお話を伺い「全て機械任せにしてよいものではないな。」という声が聞かれました。
参加学生のコメントから
- 萱鼠の巣を見つけて開けてみたけど中にはいませんでした。でもお米を食べた後と、フンがあったのでこんなに小さな家にちゃんと居たんだなと感動しました。蛇に食べられないように地面から少し上の部分に巣を作っていたり、生きるための工夫が見られて面白かったです。脱穀作業は機械に手が挟まれそうで少し怖かったです。(脱穀作業を行って)
- 茎の色が紫のものが金時、白いものが紅はるかと教えてもらいました。金時は丸い形、紅はるかは細長い形のものが多かったと思いました。さつまいもは砂壌土の方が方が育ってやすいらしいので、今回は大きいものが少なかったのかなと思いました。小さいものは太めの根と違いが分かりづらかったです。上坂さんがカマの背でスコップについた土をとっていて、そんな使い方もあるんだと思いました。(サツマイモ掘りチーム)
- 籾摺りをしました。(行なったっていうか見学しました。)籾摺り機械を使って、玄米がでてきました。それを精米して、普段食べる白米になることに気がつきました。そこで、普段の食べ物に近づいてきたように見えました。(籾摺りチーム)
- 藁まきでは、はさかけの時と同様に田んぼ内で循環している、完結していて無駄がないルーティーンだと感じました。また、藁のいい匂いがして、香水などの匂いではなく落ち着く、リフレッシュできる香りで、ストレスのたまっているときに藁の香りのルームアロマがあればすっきり、ゆったりできそうだと感じました。(藁を撒くチーム)
今回参加させていただいた「棚田オーナー制度」は、あちこちからやってきたさまざまな年齢の人が棚田に集まります。
体力や身体的に出来ることと出来ないことがあらわれますし、体調や気分に左右される時だってあります。早く帰れないといけない人だっていますよね。
大変な作業が多いからこそ、みんなが一丸となって作業をおこなう中で生まれるやりとりは教室での授業とは全然ちがいます。しんどいと感じるほどの重労働だからこそ、前向きなコミュニケーションをとりながら、楽しくワイワイ進めていくことで、見えない一体感がうまれる特別な瞬間に立ち会えることが『近江里山FWプロジェクト』の醍醐味だと思いました。
みんなで大切に作ったお米を食べる時が楽しみです。
『近江里山FWプロジェクト』は、まだまだ続きます。
レポート:山田 真実(仰木での作業当日は別用で欠席してしまった、地域実践領域 助手)