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今年も、「地域の素材でつくる」1/旅する流木〜水とつながるものたち〜

今年も、「地域の素材でつくる」1/旅する流木〜水とつながるものたち〜

成安造形大学に来られた方は、もうご覧になりましたか?

領域の研究室がある、聚英館1階入り口すぐの空間で『地域の素材でつくる。1』の課題展示を行っています。

先週(2020年11月24日)、2年生の後期授業『地域の素材でつくる。1』の課題発表がありました。

そこで、今回もアシスタント視点から、この作品が出来上がるまでのあれこれをレポートしたいと思います。

FW 湖岸南三ツ谷公園付近/多賀町/犬上川

この授業は仁連先生による『地域実践学2 サステナブルデザイン』と連携して行われています。

夏休み明けの1015日、まずは琵琶湖の東側、彦根市や多賀町の方面へフィールドワークに向かいました。

最初の目的地【湖岸南三ツ谷公園】彦根市の新海町・薩摩町・柳川町付近

晴れ渡った寒空のもと湖岸の探索と流木調達を行いました。平日の午前中ということもあり、公園内の人影はまばらです。

この日は風が強く琵琶湖の波がいつもよりも高めに打ち寄せています。植物や貝殻に混じって、プラスチックのバケツや空き缶・発泡スチロールなどを見かけました。

湖岸に流れ着いていたこれらの“漂流物/漂着物”に私たちは注目しました。

滋賀県は四方を山に囲まれ、中央には、山に染み込んだ水が流れ出した大きな湖がつくられています。

この、おおきな水の流れの途中では、様々な自然の恵みと複雑な関係性が影響しあっています。その中で漂流物/漂着物は、この場所やそれまでの時間を想像するための、重要な手がかりとなるのではないだろうか、という予感がしました。

続いては、仁連先生のお宅へ。

仁連先生が住まれているこちらの古民家。再生可能エネルギーの活用を目指し、その土地のものを使って生きる“実践の場”として、リノベーションされた室内やキッチン・お庭などを案内していただきました。

風とおしが良い仁連先生のお宅。「人にも環境にも社会にも優しい暮らしってなんだろう。」私なら、これからどんなところに住みたいだろう、と、アシスタントもあれやこれや想像していました。

多賀町の森林を管理している【大淹山林組合】では、森林レクレーション施設の見学や森を次世代につなぐ取り組みについてのお話を伺いました。

大滝山林組合は犬上川流域の森林を中心に保育管理を行っている組合です。森林環境学習や自然体験の場として「高取山ふれあい公園」を運営しており、私たちのフィールドワーク当日にも近隣の小学生がやって来ていて、校外学習を行っていました。

そこから、犬上川上流へ。犬上川ダㄙ周辺を散策しました。

最後に、【多賀町中央公民館「多賀 結いの森」】を見学しました。

こちらの設計はohさん(大西麻貴+百田有希)。旧公民館の建て替えにより、新しく建設された「多賀 結いの森」は20193月にオープンした場所です。

構造材・下地材・内外装材・家具材には多賀町産のスギとヒノキが使用されています。なんと、この建物の9割以上が多賀町の材料でできているそうです。ホールや廊下など、各所に来訪者が休むことのできるベンチが配置されており、木質感溢れる明るい空間でのびのびした気持ちになりました。

制作

大学に戻ってからはフィールドワークの振り返りの後、作品制作のためのアイデア出しをしました。

集めて来た湖岸の貝殻や漂流物を机いっぱいに並べ、手触りや重みを感じたり、その正体や使い道を想像したり・・・

みんなで採集した「地域の素材」を持ち寄り、各々が感じた琵琶湖の姿や川の上流/下流の移り変わりなどについて、捉え方の違いを確認し合いました。

展示物を見ていただくと一目瞭然ですが、今年度は流木を組み合わせてフレームを作り、川をさかのぼるように写真を撮っていこう!ということを作品にしてみようと試みています。

そこで、写真撮影のため、今度は安曇川へ向かいました。

FW 安曇川 下流〜上流へ

「琵琶湖に流れ着く漂流物(流木)に着目し、その素材の持つ魅力から、なぜそれが湖に流れ着くのか、そのルーツを探るために上流に遡り、流木をきっかけとして様々な問題に気づいていく。」

授業での、そんな石川先生のことばを頼りに、流木が元、存在した場所へ。安曇川の上流地点を仮に葛川 坊村町のあたりと定め、そこから琵琶湖側へくだるように写真を撮影していきました。

以下、学生の作品紹介です

旅する流木 〜水とつながるものたち〜

琵琶湖に流れついた流木。それらはかつて森に生き、山からの水によって育ち、空気を浄化し、多くの生き物を育んできた。もちろん人間も、木によって火をおこし、家を建て、モノを作り、木陰を楽しんできた。

もう役目のないように思える流木であるが、それらを組み合わせてフレームを作り、ふるさとの川を上る旅をさせることにより再生させようと考えた。流木フレームは、その形がまだかつての生命力を宿しており、水辺の景色を生き生きと映し出すに違いない。

流木フレームは、水辺に堂々と存在する。

違和感なしの調和である。

流木フレームが映し出すのは、自然のつながり。

水は森を潤し、森は空気を清め、人や生き物は、その恩恵を受けている。

流木フレームが映し出すのは、自然のおおらかさ。

人間の行為や人間が放り出したものさえも包むように受け入れる水。

そのおおらかさに甘えていてもいいのか。

流木フレームは、大地に堂々と存在し、

時の流れと共に、わたしたちに語りかけてくれるだろう。

 

「自然の景色の美しさは、何げなく目にしてはいるが、じっくりと見ることは少ないです。この流木フレームを自然の中に置くことによって、その存在感から人の視線を集めれば、と、思いました。囲んだ形の中に何が見えるかとのぞきたくなりませんか?(鑑賞者に、)そういう行為の中でふと、水とつながっている森や生き物、岩、空気といったものに目を向け、その素晴らしさに気がついてほしいです。」(oさん、制作に対する思い・考え)

「『“旅する”流木』というタイトルが、流木の存在感に着目していること、上流〜下流への 場 の移動、 場 と 本体 の関係を切りとった写真、をゆるくつなげている面白いタイトルだな〜と思いました。色々と予想をたてて「こんなことも出来るかな」と思いつつFWへ出発しましたが、実際には難しかったり、逆に、現場で色々と思いつくこともあったりして、写真を撮りに行くという行為自体に、予想外の出会いがあることが楽しかったです。(現像してから、はじめて写っているモノに気がついたり。)」(Yさん、作品を見て)

レポート:山田真実(地域実践領域 アシスタント)

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