日常の魅力を採集する ( FW草津から)
地域実践領域のアシスタントによる授業レポート、「今日の一枚」特集編。
10月中旬から『地域実践基礎演習3』では「海津/草津」への分散フィールドワークで授業をすすめています。
今回は「前半・草津」へのフィールドワークを行ったグループの調査レポートとプレゼンテーションを見ながら、草津の魅力ポイントを巡っていきたいと思います。
*新型コロナウイルスの三密対策のため、今年のフィールドワークは行き先を分散し、同一メンバーによるチーム行動を徹底したうえで授業をすすめています。
「草津」という地名は全国各地に点在していますが、中でも群馬県の「草津温泉」はよく知られている観光地ですね。
滋賀県「草津市」にはかつて、中山道(なかせんどう)と東海道(とうかいどう)の分岐点の宿場町として栄えた“草津宿”があり…と聞くとなんだか温泉もありそうだな、と勘違いしてしまう人もいるそうな。(かく言う、地域実践のアシスタントも実はゴニョゴニョ…)
「じゃあ、草津市ってどんなところ?」「宿場町ってなんだろう?」と思っている方もいるのではないでしょうか。
今回は、地域実践領域の学生と草津を巡りながら、“街道”や“草津宿”について探っていきましょう!
地域実践領域では、学生が自身の発見した地域の魅力を写真におさめ、写真の状況解説やタイトルをつけることで『今日の一枚』として記録しています。
それでは、各人が発見したメジャー/マイナーポイントを見つつ、地域実践領域の学生の視点で草津市周辺をじっくり歩いてみましょう!
小学校に登校するルートで毎日見ていた銀の何か。改めて見ても何かわからない。真ん中を覗くと下の道路が見える。————–Y.Hくん
近江の街道
江戸時代、徳川家康によって江戸から全国につながる道が作られました。
参勤交代や信仰(伊勢参り、西国巡礼など)・商売のために多くの旅人たちがその道道を利用し、大変な賑わいを見せた街道は、現代もその名とともに人やモノを運ぶ役割を担っています。
滋賀県のあたりはその頃“近江”と呼ばれており、日本の東と西を、太平洋側と日本海側を結ぶ真ん中に位置しているため、交通の要所がいくつも置かれていました。
“草津宿”もそのひとつ。
江戸ー京都をつなげる東海道と中山道の二つのルートは、ここ滋賀県草津市でちょうど合流・分岐していたため、“草津宿”は旅人の出入りとともに賑わい、近江商人によるものの交流、旅人同士の情報交流などの場ともなりました。
天井川のトンネルから出てすぐのことろに、それぞれの道の方向を示すマンホールがありました。ご当地の絵が描いてあるマンホールは見たことがありましたが、方角が書いてあるマンホールは初めて見ました。————–M.Tさん
草津宿本陣
草津本陣の史跡では、加藤先生の案内で歴史的な経緯などを学びました。
本陣とは、公家や大名・旗本といった身分の人間が利用出来た宿泊施設です。草津には江戸時代を通じて二軒あり、そのうちの一軒、「田中七左衛門本陣」は現存しています。一般公開もされており、建物の中へ入って大名が宿泊していた部屋や湯殿(お風呂)・台所土間などを見学することが出来ます。
普段みているコンクリートの溝蓋に「草津宿本陣 田中九蔵家跡」と書かれており東海道五十三次にどう言う関わりがあるのかは分からないが凄く珍しかった。———————S.Tくん
草津本陣の中に馬を泊らせる馬小屋のような所がありました。理由はわかりませんがその柱の上に鳥が泊まっていて、馬が逃げ出さないように見張っているように見えました。———————Tさん
ひと目みて深いと感じた。足を洗う所だという。わざわざ脇に作られているあたり役割を踏まえ ている。掃除とか大変だったんだろうなと思う。 恐らくだけどこれは宿泊者だけが使うものではなく他の使用人や本陣側の人々も使っていたのではないか。土埃を落とし本陣を汚さないようにしていたかもしれない。———————Kくん
「本陣では大名に対するおもてなしがつまっていて面白かったです。玄関では、籠がそのままつけられるような構造になっていたり、大名の寝室は段が一段高くなって下から刺されるのを防いでいるものだったり、トイレひとつにしても配慮がすごいと感じました。また、「本陣職はつらいよ」という期間限定展示の内容もその時代の人が参勤交代ひとつにしても死ぬ気で移動していたことに興味をひかれました。」(Sさん)
草津宿場町遺跡
草津宿場町遺跡の発掘現場の様子を見学せていただきました。偶然にも作業員の方が休憩中のタイミングで、特別にお話を聞かせていただくことが出来、貴重な体験となりました。
遺跡では 18 世紀の半ば、江戸中期の地面を掘り返しており、瓦などのがれきが出てきていました。「瓦が出てくる」ということから、「過去に火災があり、そのごみを埋めたことでこの地層ができているのではないか」といったことを考えることが出来るそうです。
草津宿場町遺跡の一部を見せていただいて、江戸時代のがれきをみて、本当に江戸時代があったんだとなんだか感動しました。———————A.Sさん
草津宿街道交流館
草津宿街道交流館では、館長の八杉淳 先生に展示品について解説していただきました。
東海道と中山道が出会う場所であり、多くの人がこの草津で休んだり、泊まったりしたことがその街並み模型からよくわかった。街道沿いに家がびっしり建っていたのは、遠い旅路で疲れ果てた旅人を癒すために様々な商いが行われていたからだろう。東海道中膝栗毛などの浮世絵、旅籠屋鑑札など、いわゆるメンバーズカードやクーポン券のようなものがあったこと、旅の案内書(現在の旅情報誌「るるぶ」のような本)があったことは、草津の町の賑わいを感じさせる。旅籠の他にどのような商いが行われていたのか、次回にもう少し調べてみたい。(Oさん)
草津市本陣近くの光圓寺の屋根を見上げると、そこには立派な鬼瓦が。と同時にそびえ立つ高層マンションが目に映った。青い空を切り取るようにカメラに写ってきたマンションと鬼瓦。果たして共存できるのか?———————C.Oさん
神社を撮ろうとしたら大きいマンションが写りこんできた。またマンションの工事をしていたけどこれから大津市はどうなっていくんだろう…————–T.Tくん
草津を歩いていると、このように歴史的な資料・遺跡と背の高いマンションなどが混在している景色をあちらこちらで見かけました。あるチームはそのことに着目し、草津の“歴史を残す取り組み”と“新しい町作りの取り組み”についてまとめ、発表を行いました。
【チーム 一休さん】
『草津 2つの魅力』
昔ながらの老舗 と 最近できたおしゃれな店。
本陣や道標、お寺、神社など歴史があるもの と 新しいマンション。
両者が混在していることに対する違和感がこのチームのリサーチのきっかけとなったそうです。
琵琶湖の南東部に位置する草津市。京都駅まで乗り換えなしで20分、大阪駅まで50分というアクセスの良さもあり、東洋経済新報社の調査によると、住みやすさランキングが現在、近畿ブロックで第3位だそうです。(2017 年までは 5 年連続 1 位)
「ランキング上位にある草津の町について、ではどれだけの住民がここに歴史的文化的な魅力も秘めていることを知っているのだろうか」
草津の発展と未来を視野に入れた魅力的なまちづくりについても触れながら、それに負けないぐらい歴史的にも価値のある草津の“二つの顔”をご紹介。
昔ながらの町並みだけでなく、市民のニーズに応えた町づくりが進められており、いい町だなと思いました。また、滋賀の中には、まだまだ草津のような歴史ある町がたくさんあるのではないかと思い興味が湧きました。(Sさん)
【草津チーム(仮)】
『草津歴史街道』
中山道と東海道が重なる草津では、たくさんの社寺仏閣が点在しています。
神社と街との関わりについて詳しく掘り下げていきたいと考え、このチームは『街道の神社』というテーマで調査しています。
小汐井神社の神馬の耳に蝉の抜け殻があった。この蝉は⻑生きしそう。————–Tくん
前回行った時と大分雰囲気が変わって見えました。————–A.Tさん
【うぃーあーくさつ チーム】
『街道と旅人とお寺』
お寺を調べていく上で、「お寺は宿泊施設や公共施設的な役割も担っていたのではないか。」と考え、うぃーあーくさつチームはメインテーマを“お寺”に、そばにある街道や関わってきた旅人などについてまとめました。
真願寺の掲示板に書かれていた言葉で、多分この言葉も期間限定のものなのだろうけど、落ち込んでいるときなどにふとこの言葉にであえるこの道はおしゃれだと思いました。ふとした瞬間にも心を軽くしてくれる道だと思いました。———————Sさん
家のれんがにはいろいろな画像があります。特別な歴史、特別な物語、特別な意味を持っていますか?同じ家でも、両側の異獣は違っていて、特に目を引いています。————–Zさん
お寺の瓦をきっかけに、瓦のデザインや意味についてさらに調べていました。
今回は、日々のフィールドワークでまとめる「今日の一枚」にフォーカスしてレポートしました。
後半のフィールドワークは先週から始まっています。日に日に風がさらに冷たく気温が下がっていくのを感じますね。みなさんもフィールドワークの際には雨・風・寒さの対策をバッチリして臨みましょう…!
次の発表も楽しみです。
レポート:山田真実(地域実践領域 アシスタント)
右から
①『文化的景観 生活となりわいの物語』
金田 章裕(きんだ あきひろ)
日本経済新聞出版社、2012
人間と自然が共同で作り出した文化的景観を、地域資産としてどう守り、生かしていくのか。文化財保護法改正の中心メンバーでもある著者が、内外の事例を紹介しながらまとめる、「文化的景観」に関する初の解説書。(*日本経済新聞出版社HPより引用、https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/16829)
②『近江の宿場町 (淡海文庫)』
八杉 淳 (やすぎ じゅん)
サンライズ出版、2009
皇女和宮が通った中山道は「姫街道」?「ずいずいずっころばし」と街道の関係とは?近江の東海道と中山道の宿通町の成立や構造、運営とともに、宿場を通行し、休泊した人々、暮らす人々のすがたを紹介する。(*カバー裏、紹介文引用)
③『近江東海道を歩く (近江旅の本) 』
八杉 淳 (やすぎ じゅん)
サンライズ出版、2010
京三条大橋から逢坂峠を越え、大津ー草津ー石部ー水口ー土山の各宿場、そして鈴鹿峠まで。芭蕉が眠る義仲寺や草津宿本陣、旧和中散本舗など、近江東海道を歩いて楽しむガイドブック。(*カバー裏、紹介文引用)
④『中山道 街道開設四百年記念』
(編集) 板橋区立郷土資料館ほか
板橋区立郷土資料館、2002
街道開設四百年記念し、中山道の成立と発展、江戸時代の旅とそれを支えた仕組みに関する資料を紹介した展覧会の図録です。
フィールドワークを行うにあたって3密を避け、下記の点について十分配慮をして慎重に行います。
1. 3密を避けるため、屋外で十分に距離をとって歩くようにする
2. 必ずマスクを着用する
3. 大声を出したり、必要以上の接触が無いようにする
4. 必要以外に外部の人と接触しない(外部の人にお話いただくなどする場合はマスクの着用など必要な感性症予防対策を講じてもらう)
5. 5名に一人あたりの引率者を配置する
6. 過去2週間の行動記録をしっかりつけている学生を対象とする
7. 引率者は消毒液、ティッシュ、マスクの予備等、感染症防止のための用品を携行する
8. 公共の交通機関を利用する場合は、できるだけ密を避ける
9.その他、受講生、引率者は感性症に関して最善の注意を払って行動する