草津に受け継がれてきた“青花紙”をこの先へ
地域に伝えられる無形の民俗文化財である青花紙の保存と継承について
今回のアシスタントレポは、『地域実践学入門2』の授業で行われた、“青花紙”についてのレクチャーを特集します。
授業内容は、草津宿街道交流館の館長 八杉 淳先生と学芸員の 岡田 裕美さんを特別講師にお迎えし、草津の伝統産業の一つである青花紙について学び、その上で、その技術の保存に対するアイディアを班で考えるというものでした。
11月末、特別講師のお二人に大学にお招きし、オンラインによる講義をしていただきました。
青花紙(あおばながみ)というものをご存知ですか?
“青花紙”は、草津市の花である「あおばな」の色素を和紙に染み込ませたものです。
「あおばな」に含まれる青色色素は水で消えるという性質を持っており、友禅染や絞染の下絵を描く絵の具として利用されていました。江戸時代には、浮世絵を描く青色絵具として使われたことも分かっています。しかし、現在は、“青花紙”の代用品として「化学青花」が登場し、本物の“青花紙”を使う職人も少なくなりつつあるそうです。
滋賀県草津市とその周辺地域では、江戸時代からおよそ380年間にわたって、染料植物のあおばなが栽培され、花弁の青色色素を和紙に染み込ませた青花紙が生産されてきました。
そのために、草津の、ひいては近江の名産品として“青花紙”は広くその名が知られていました。
しかし、実は、現在残っている草津の『青花紙の農家さん』は“1軒”のみなんです。(※2020年現在)
さらに、青花紙の生産と流通に携わる仲買人さんも、もう、“おひとり”しかいないそうです。聞くところによると、農家さん・仲買人さん共に、後継者もいらっしゃらないそうです。
青花紙生産の衰退の原因をまとめると
①生産農家さんの高齢化(“青花紙”生産は重労働!あおばなが別名「地獄花」と呼ばれるほど)
②着物の需要減少と「化学青花」の登場
③専業農家さんの減少(かつては専業農家の現金収入を得るための副業として行っていたところが多かったため)
学芸員の岡田さんによる『アオバナの栽培』や『“青花紙”の生産方法や現状』について解説に続いて、
八杉先生にからは『“青花紙”の歴史』というテーマで
江戸時代の文献や草津市に残されている江戸時代の生産農家の資料を紹介しながら、史料からみた青花紙についての講義を行っていただきました。
農家や地元の方の言葉を織り交ぜ、貴重な文献資料から“青花紙”について知ることができた今回の授業では、学生からも驚きや危機感など様々な反応がみられました。
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「青花紙の生産の起源は不明である。注文される数が多いらしく、需要はあるが、生産数が間に合っていない。なので断っていたりする。夏の真っ盛りにアオバナを収穫するため、高齢者にはつらい仕事であることから、地元の農家さん達は、地獄花と呼ばれている。現地の青花紙の生産者が1人である事に驚きました。それほど作ることが大変なんだなと映像を見て感じました。おばあちゃんが手作業で和紙を2枚に剥がしていくのが凄かったです。爪楊枝を使わないで手だけで剥がしていくのが熟練の技だなと思いました。」(Iさん)
「草津という人口が多く栄えている街でも人手が不足しているというのに驚いたが作成の過程を聞いて納得した。高い技術や時間が必要とされる伝統の後継者が減少しているのはどこの地域も同じなのだと思った。青花農家さんが1人になってしまったとのことだが機械化が進む現代で全て手作業というのは厳しいのではないかと思う。手作業だからこそだせる魅力もあるとは思うがそれで文化自体が消えてしまうよりは一部を機械化してしまえばいいのではと思うがそれで文化の価値をなくしてしまう可能性もあり改めて継承していくことの難しさに気づいた。」(Tくん)
レクチャーをうけ「青花紙の保存継承」について、学生はグループでアイディアを考えました。
沢山の人に青花紙を伝え、そこで一つの交流の場を生むための『コミュニティづくりイベント』、
誰でも見れる、信憑性のあるデータを手に入れるための『オープンアーカイブの方法』、
生産者さんと職人さんとが離れた距離にいることで情報を共有していないというお話から『生産地と消費地のつながり方』を考える、など
各々の視点・問題点から生まれた提案が発表されました。
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「やはり青花紙を作っている農家さんやその仲買人の高齢化が進むことが大きな原因と思うので、私たち若者に知ってもらい、担い手となる人を増やしていくことが大切で、そのためにも青花紙をまず人に知ってもらわないといけないということを学ぶことが出来ました。その青花紙を広めることもなかなかに難しいことを今回のチームミーティングを通して分かりました。」(Uさん)
「発表などで様々な方法が出ましたが、アオバナは沢山の可能性があります。これだけの可能性を秘めたものを周囲に伝えていくとともに、青花紙のように今消えかかっている文化が多く存在しているのだと再認識することができたと思います。」(Tさん)
「自分自身も青花や青花紙のことについて知らなかったため、細かな用途や技術について知れて、とても面白かったです。伝える機会があったなら、もっとたくさんの方に興味をもってもらえる産業だと感じました。
一方的に「伝える」だけでなく新しく青花に触れた人の意見や感想、考えを聞くことで生産者の方の喜びにも繋がり、沢山の人で“青花紙のこれから”を考える輪ができていくのではないでしょうか。」(Sさん)
存続の危機にある青花紙。「草津あおばな会」や 草津市 は青花紙の生産技術を学ぶ講座を開催するなど、青花紙を次の世代に伝えていくための様々な活動をされています。
これを読まれている 皆さん なら、「青花紙の保存継承」についてどのように考えますか?
授業担当:加藤賢治(地域実践領域 准教授)
レポート:山田真実(地域実践領域 アシスタント)