滋賀県立美術館の展覧会に参加しています
展覧会開催中!
みなさんは今年の6月末にリニューアルオープンした滋賀県立美術館へはもう足を運ばれましたか?
実は、この滋賀県美術館のリニューアルオープン記念展『Soft Territory かかわりのあわい』(会期 2021年6月27日~8月22日)、に地域実践領域も関連展示として参加させていただいております。
場所はこちら!
正面から入って右にすぐ見えるショップコーナーのさらに奥、突き当たり。Labo(ラボ)と呼ばれる場所です。
「MUSUBU地図」は、近江(滋賀県)を大きく「基盤」「交通インフラ」「エネルギー」「コミュニティ」に分け、さらに分類した21枚の“要素の地図”と、この中の数枚を重ね合わせ再構成した“共創の地図”とがあります。
地域実践領域の加藤賢治先生・石川 亮先生・金 再奎先生を中心に、デザインに南 琢也先生が、地図の素材に滋賀県の 成子紙工房 の方々が、その和紙への印刷に宮川印刷株式会社 さんが関わってくださっています。
職人さんたちがうんうん頭を悩ませながら作りあげた地図。
この展示台は、杉と檜の間伐材を利用したものです。
木材、製材は犬上郡多賀町の大滝山林組合さん。その材料をしたマップケース(台座)制作は一般社団法人kikitoさんにお願いしています。
気になった地図をほんのちょっとご紹介。
“共創の地図” まつり
『近代に至るまでは、山林とそこに含まれる入会地は、各集落の共有財産であり、田畑の肥料としてまた薪炭などのエネルギーとして無くてはならない生活資源であった。そこに暮らす人々は、大字という集落単位を生活の範囲として、氏神を祀り、五穀豊穣と集落の安寧を願ってきた。それぞれの大字では春や秋の例大祭になると笛や太鼓の祭囃子とともに神輿や山車(だし)が集落を練り歩き、神々に地域特有の作物や魚貝などを捧げ物として供えた。古代の郡の元には複数の郷(ごう)という領域があり、その中に複数の大字という氏子域が存在したが、水利権や庄園支配の歴史などによって、複数の大字を氏子域とする神社が生まれ、郷祭りと呼ばれる規模の大きな祭礼が各地で催された。様々な境界線の内側では、その地域独自の有形無形の文化が祭礼や年中行事とともに育まれてきたのである。』
“共創の地図” すみか
『地図上の太陽光発電の潜在能力とは、建物の屋根を示しており、そこから現代に暮らす人々の位置を知ることができる。近世、人々は山林の麓や尾根筋、農地が広がる平野部に神社や寺院とともに集住していたが、現代に至っては、交通インフラが整った鉄道や道路近くの新興住宅地に移住する人々が増えた。新興住宅地は社寺から少し離れているが、人々は現代に至っても神社では現世の安心、安全を祈り、寺院では先祖とのつながりに感謝する。その他の宗教施設も含め、神社や寺院は、人々のすみかのそばに欠かすことができないコミュニティを生み出す社会関係資本であるに違いない。』
それぞれの地図につけられた解説までじっくり読んでいただけたら、『なぜこのデータが選ばれたのか』『これらの情報を組み合わせることで何を読み取れるのか』想像の幅がさらにぐぅとひろがるような気がします。
右側に添えられているヘンリー・フォスター先生による英訳文もめっちゃ素敵です。
わたしたちの「琵琶湖の庭」
こちらは、ラボのすぐ前に置かれたワゴン。
ここでは我ら地域実践領域の有志でほそぼそ活動している『漂流物研究会』の成果物も展示させていただきました。
「琵琶湖の庭」とは
“庭”という言葉をイメージのとっかかりとし、琵琶湖湖岸の漂着物、小石、拾い物などによって小さな空間を構成させています。「琵琶湖の素材を互いに関係させたり、集めて組み合わせることで、目の前のものごとを新たな視点から観察できるのではないだろうか。」そんな考えから企画されはじめた取り組みです。
琵琶湖とつながって姿を変える様々な素材や動きの断片を、一緒に観察してみませんか?
これらの漂着物の採集場所は上から、
最上段:彦根市南三ツ谷公園、
二段目:大津市 北比良、
三段目:大津市 ほうらい浜、
最下段:大津市 唐崎(タニシばっかりの方)、大津市 近江舞子
(*前後期で展示替えをおこないました。写真は〜7/23のものです。)
わたしたちはこれらの展示物を「琵琶湖の漂流物」はたまた「琵琶湖の素材」と呼んでいます。これらはいったい何なのでしょう。どこからやってきたものなのか。
場所によってレイクグラスと陶片ばかりが落ちていたり、清掃された後なのかほとんど何も拾えずサラサラした砂浜が広がっているところだったり、琵琶湖の岸辺の景色は様々。砂浜。沼地。岩場。岸辺で生活する民家の庭とつながっているところ。漁港となっているためにコンクリートでがっちり固められている湖岸も多くあります。
わたしたちはあちこちの湖岸へ向かい、拾うことのできる漂着物の種類に違いが見られることに興味をもちました。
ほんのすこし場所を変えるだけで、どうしてこれほどまでに景色がうつり変わっていくのでしょうか。
反対の壁側で再生されている映像。地域実践領域のフィールドワーク授業で積み重ねられてきた課題のひとつ『今日の一枚』です。
『今日の一枚』は現在オンラインワークショップとして、一般参加も募集中です。詳しくは前回のサイトで紹介させていただいてます。(https://seian-ccd.info/2021/07/22/wskyounoitimai/)
参加はこちらから↓
【応募方法】
下記URLのGoogleフォームにご記入ください。
画像容量(10MBまで)
形式:jpeg,PDF,PNG等
滋賀県や琵琶湖に興味ある方も、色々な見方で土地や文化を考えたい方も、和紙に印刷された素材そのものが好きな方も、きっと楽しい展覧会になっているのでは、と思います。
夏休みにかけて、展覧会はまだまだ続きます。
この夏のお出かけ先にはぜひ、リニューアルして雰囲気がカッコ良くなった滋賀県立美術館もご検討ください…。
この連休中(7月23日)には、加藤賢治先生、石川亮先生、金再奎先生と担当学芸員の荒井さんの4名で「MUSUBU地図が示すこと」というタイトルで講演会を、そして、ワークショッププログラム「MUSUBU地図をつくる」を開催しました。
講演会では、「MUSUBU地図」が作られたきっかけの話を皮切りに、要素の地図と共創の地図の言葉の意味、地図の注目ポイント、複数のレイヤーを組み合わることで現れる意味について語っていただきました。
わたしが面白いなと感じたのは、“大字(おおあざ)”の話とテリトリー(なわばり)について。このお話を聞いてからもう一度展覧会場へ戻ると、さっきまで気がついていなかった読み取り方が見えてくるような…。
地図の楽しみかたっていっぱいあるんだなあ。
レポート:山田真実(地域実践領域 アシスタント)2021/07/28
滋賀県美術館 リニューアルオープン記念展『Soft Territory かかわりのあわい』
開催概要
テリトリーとは、生き物のなわばりのこと。食べるものを手に入れ、仲間やパートナーとともに日々の生活を送るフィールドであり、時には命をかけて守り、奪うもの。そんなテリトリーという言葉からは、生き物の命がかかった鋭さや、他者を拒絶する頑なさが感じられることでしょう。
そして私たち人間の世界では、国家間の戦争、地域間の紛争、家と家、家の中での諍いなど、テリトリーを守ろうとするあまり、自分のつながりに含まれないものを排除しようとすることもあります。さらに新型コロナウイルスの感染拡大が、人と人とのつながりを分断し、かかわり方のかたちを変えてしまった結果、これまでとは異なるテリトリーの姿が生み出されつつあります。
そんな今だからこそ、テリトリーについて改めて考えてみたいと思いました。テリトリーを形作る境は、交易が行われたりパートナーと知り合ったりする場所、未知のものと出会い、新しいものが生まれる場所でもあります。そこで生まれるもの、出会えるものが魅力的だからこそ、私たちは時にテリトリーの境目を目指し、その経験をもってこれまで成長してきたのでしょう。そんな「かかわりのあわい」とでも言うべきテリトリーの境目を形容するのは、鋭さや頑なさなどではなく、やわらかさ、ではないでしょうか。
滋賀県立美術館は、約4年間の休館中に美術館というテリトリーを離れて、県内のさまざまな地域に入り込み、3回にわたってアートスポットプロジェクトを開催してきました。その集大成とも言える「Soft Territory かかわりのあわい」展では、滋賀にゆかりのある12人の若手作家とともに、かかわりのあわいで生まれるものを見つめ、かろやかでやわらかなテリトリーのあり方を探ります。
会期
2021年6月27日(日)―8月22日(日) 9:30―17:00
※月曜日休館(祝日の場合は開館し、翌日休館)
会場
滋賀県立美術館 展示室2、展示室3、エントランス、ギャラリー 他
観覧料
一般 1,200円(1,000円)、高・大生 800円(600円)、小・中生 600円(450円)
※( )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳等をお持ちの方は無料
関連展示
成安造形大学芸術学部地域実践領域
滋賀県立美術館WEBサイト:https://www.shigamuseum.jp/
講演会「MUSUBU地図が示すこと」
開催概要
リニューアルオープン記念展 「Soft Territory かかわりのあわい」の関連展示を担当した成安造形大学芸術学部地域実践領域教員の石川亮、金再奎、加藤賢治と担当学芸員が講演を行います。
日時 2021年7月23日(金) 12:30〜14:00
登壇者
石川 亮(成安造形大学芸術学部地域実践領域 教員)
金 再奎(成安造形大学芸術学部地域実践領域 教員)
加藤 賢治(成安造形大学芸術学部地域実践領域 教員)
荒井 保洋(滋賀県立美術館 学芸員)
ワークショッププログラム1「MUSUBU地図をつくる」
開催概要
リニューアルオープン記念展 「Soft Territory かかわりのあわい」の関連展示を担当した成安造形大学芸術学部地域実践領域教員の石川亮、金再奎、加藤賢治と「MUSUBU地図」づくりを行います。
日時:2021年7月23日(金、祝)12:30〜14:00
場所:滋賀県立美術館 木のホール
*参加希望者 募集中*
ワークショッププログラム2 「琵琶湖の庭(漂流物研究)」(100h)
「庭」という言葉をイメージのとっかかりとし、琵琶湖湖岸の漂着物、小石、拾い物などによって小さな自分の庭を構成する。琵琶湖の素材を互いに関係させたり、集めて組み合わせるワークショップです。
担当:山田真実(成安造形大学芸術学部地域実践領域 アシスタント/「琵琶湖の庭」漂流物研究会)
日時:8月21日(土)13:30~15:10 場所:滋賀県立美術館 ワークショップルーム(10組)
*ご予約は、滋賀県立美術館WEBサイトからお願いいたします。
*オンラインワークショップ参加者 募集中*
「今日の一枚」オンラインワークショップ
〜日常の魅力をつかまえるトレーニング〜
●魅力をつかまえる?
魅力とは=「人の気持を引きつけて夢中にさせる力」と、辞書で調べるとこんな感じの答えが出てきます。確かにその通りと思いますが、それは魅力を発信しているそのものに原因があるのでしょうか?それとも対象を魅力と感じた自分自身に原因があるのでしょうか?日常生活は魅力で溢れていると考えられますが、その時の自分自身のコンディション、体調、心境によって、それに気づくかどうか、その様に思えるかどうかわかりません。一般的に魅力的と言われているものが、その様に見えなかったり、普段は気にも留めないものが、ある瞬間とても魅力的に見えたりするかもしれません。突き詰めれば突き詰めるほどわからないものだと思います。しかし、その魅力的なものを記録、保存して、ある時再び目を向けると、それらは紛れもなく「その瞬間の魅力」の核心部分へと導いてくれることでしょう。
「今日の一枚」は、日常生活において魅力を感じた瞬間に、直ぐに捕まえるトレーニングです。まずは何か、「そこら」の魅力に気付いたら、あれこれ考えずに写真撮影してみましょう。それは至って個人的なものでも、他の人と思いを共有できる(かもしれない)ものでも、どちらでも良いと思います。
ある程度写真撮影できたら、その中から数枚選び、タイトルとエピソードを考えます。その時、その瞬間に感じた感覚をそのまま、タイトルやエピソードに変換してワークシートに記録することで、自分の記録を客体化してみましょう。
【手順】
①魅力を見つけたら写真撮影する。(探す、見つける、)
②調査日時、調査場所を記す。
③写真を選んで、それにタイトルとエピソードを記す。(言葉にする、まとめる)
④ ワークシートを紹介(発表)する。
◎紹介方法|地域実践領域のWebサイトに掲載します◎
【応募方法】
下記URLのGoogleフォームにご記入ください。
画像容量(10MBまで)
形式:jpeg,PDF,PNG等
関連展示:成安造形大学地域実践領域
「MUSUBU地図」
発案・企画:石川 亮(成安造形大学芸術学部 地域実践領域 准教授 附属近江学研究所 研究員)
制作・編集:
加藤賢治(成安造形大学芸術学部 地域実践領域 教授 附属近江学研究所 副所長)
石川 亮
金 再奎(琵琶湖環境科学研究センター総合解析部門 専門研究員・成安造形大学芸術学部 地域実践領域 招聘教授)
デザイン:南 琢也(成安造形大学芸術学部 情報デザイン領域 教授)
協力:
成安造形大学未来社会デザイン共創機構/成安造形大学附属近江学研究所
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
翻訳:ヘンリー・フォスター(成安造形大学芸術学部 准教授)
制作協力
紙:楮紙・比良 成子紙工房(大津市桐生)
木材:杉、檜 大滝山林組合(犬上郡多賀町)
マップケース制作:一般社団法人kikito(湖東地域)
印刷:宮川印刷株式会社(大津市石山)
「今日の一枚」
映像編集、オンラインワークショップ:松元 悠(成安造形大学芸術学部地域実践領域 助手)
「琵琶湖の庭」
拾集、構成、ワークショップ:山田真実(成安造形大学芸術学部地域実践領域 アシスタント)