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*展覧会*3rd PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ 2022–松元 悠さんの、漁✖️リトグラフ

*展覧会*3rd PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ 2022–松元 悠さんの、漁✖️リトグラフ

*展覧会 案内*

昨年度まで、地域実践領域の研究室で助手をされていた 松元悠 さんが

『第3回PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ2022』2022年4月12日(火)− 5月8日(日)

にて作品を出展されています。
松元さんは、版画技法のひとつである“リトグラフ”をもちいて作品制作をされています。

研究室や版画ラボであのおおきなアルミの版を見たことのある方もチラホラいらっしゃるでしょうか?

今回の“地域実践レポ”は番外編として、松元さんの作品についてご紹介したいと思います。

松元悠「水(古高町)」

リトグラフ (lithograph):版画の一種です。「描画」「製版」「刷り」の3工程で作られます。昔は巨大な石灰岩の表面を平らにして、絵を描いていました。近年は石灰岩より扱いやすいアルミ板を用いることが多いです。

会場は「京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階」です。

会場内は写真撮影禁止なので、画像でのご紹介はできません!ぜひ、京セラ美術館へ足を運んでください!笑

会期は5月8日(日)までです。

現助手の山田が、この展覧会の作品について、松元悠さんにインタビューしました。

————松元さんの作品について、伺いたいです。今回の出展作品のなかで特に思い入れの強いものはありますか?

松元 どれも思い入れの強いものですが、一番は?と聞かれたら、滋賀に関わりのある2021年に制作した「里湖源五郎鮒物語(琵琶湖)」です。里湖は「さとうみ」と呼び、琵琶湖と人間のかかわりを指します。

里湖源五郎鮒物語(琵琶湖)制作過程

————あの、漁をしている絵ですね!よければ、理由もお聞きしたいです。

松元 はい、「里湖源五郎鮒物語(琵琶湖)」というタイトルです。この作品のタイトルは琵琶湖漁師の方と共に決めました。

琵琶湖の深呼吸」という、琵琶湖の生態系を維持する自然現象が2019年と2020年の2年間連続で観測されない異常事態のニュースを知り、そこから琵琶湖について知るために漁師の方に取材し版画作品の作成を進めてきました。

————「琵琶湖の深呼吸」って、冬から春にかけて年に一度起きる琵琶湖の水の全循環のことを喩えた言葉だと本で見たことがあります。晩秋~冬の外気によって冷えて沈み込んでいる琵琶湖の水の低層と、春~夏にかけて暖まる水温の層とが風波・気温の変化によってぐるりと循環するんですよね。湖底へと酸素を行き渡らせる。冷えた水の方が重いので、じゃあ循環は秋や冬に起こるのではないかと単純に思ってしまうところですが、詳しく知りたい方は是非、滋賀県琵琶湖環境科学センターのHP(「琵琶湖の全層循環」についてhttps://www.lberi.jp/learn/jikken/junkan)もご覧ください。

『湖国と文化 秋/第173号』 特集:琵琶湖の深呼吸〜育む命と温暖化 発行:(公団)びわ湖芸術文化財団、2020年10月
『湖国と文化 秋/第173号』18-19頁

松元 この作品は、その1作目になります。伝統漁法であるエリ漁の継承のために1人の漁師さんが実施されている「漁体験」を《経験する》という、いわば旅行者のような視点から描かれます。

作家自身がなにも知らないまま足を踏み入れ、言われるがままに採れた魚の中から小さい鮒を湖に返している場面ですが、そこには生態系維持のため資源回復に係る魚獲規制があり、漁をする上で、人間の琵琶湖に対する態度が現れています。

ギリギリ逃がすサイズの源五郎鮒
漁師の方と完成作品をみながらタイトルを考える

————ちなみに…「エリ漁業」とは?

松元 エリ(小型定置網)漁業とは、湖岸から沖合に向かって矢印型に網を張り、湖岸によってきた魚を「ツボ」と呼ばれる部分に誘導し、網を上て漁獲する漁法です。

魚の習性を巧みに利用した1000年以上続いている伝統漁法です

エリ漁の風景

————あれ、この写真に写ってるのは、松元さんですか?そういえば、絵の中にも松元さんや私たちが知ってる人、場所などが描かれている気がするのですが、制作方法のアプローチをお聞きしてもいいでしょうか?(下絵を作る時のコラージュの方法や素材の選び方についてお聞きしたいです)

松元 はい。ひとまずリトグラフの成り立ちについても少しふれておくと、錦絵や新聞のカラー紙面など、版画は報道に深く関わってきた歴史があります。私が刷っているリトグラフは、日本では明治期から大正にかけて日常や災害、戦争の風景を大衆に伝え残してきました。
私は現代のマス・メディアが報じる記事をソースに制作しており、現場に赴いて当事者がみていたであろう風景を観察し、写真に納めたものをコラージュして画面をつくっています。
絵に用いる上で選ぶ素材ですが、ソースがあるために、現場に行くと、ついつい事件を彷彿とさせるものを写真に納めてしまうので、それらの素材や、また、全く関係のない現場の空気感や、人々の生活を取り入れることがあります。
一方で、当事者が不在のなかでの行為であるため、登場人物は自身が演じることに留めています。

松元悠「水(北山田町)」

————ということは、松元さんたち「中のひと」が登場人物を演じているんですね!

漁でとれた魚
雨の日の蓬莱の浜から見た琵琶湖

————作品を知れる面白いお話、ありがとうございました。地域のフィールドワークから生まれた関わりが作品になっていく過程が知れて良かったです。会期終了まであと少しですが、もう一度見に行きたいな、となりました!

 

レポート:山田真実(地域実践領域 助手)

第3回PATinKyoto
京都版画トリエンナーレ2022
3rd PATinKyoto Print Art Triennale in Kyoto 2022
会期:2022年4月12日(火)− 5月8日(日)
10:00~18:00 ※入場は17:30まで
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館)5月2日は開館します。
会場:京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
Kyoto City KYOCERA Museum of Art, Main Building, South Wing 2F
観覧料:一般700円、学生(大・高)500円

https://patinkyoto.info/

出品作家
村上 早
前田 由佳理
二階 武宏
田中 彰
宮本 承司
西村 涼
吉岡 俊直
西山 瑠依
森末 由美子
和田 豊樹
濱野 絵美
門田 訓和
尾崎 森平
髙山 陽介
松元 悠
阿部 大介/鷹野 健
芦川 瑞季
澤田 華
大﨑 のぶゆき
(順不同)

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