「こんな日は早起きしよう」アシスタントレポ:岐阜県大湫町より②《大湫FW編》
アシスタントレポ:岐阜県大湫町より②《大湫FW編》
みなさんが暮らす場所の周りでも桜が見頃でしょうか。出歩くのにうきうきしてしまう季節ですね。
地域実践領域アシスタントの山田は、岐阜県瑞浪市大湫町に来ています。
わたしが大湫町に滞在しているわけは、
【令和2年7月豪雨】樹齢1300年の大杉被災復興プロジェクトの返礼品のひとつ『大杉の年輪の木版画を摺る』ため、
そして、
滞在制作をしながら、大湫町や倒木した神明大杉の保存に関わっている方々とお話しできる機会をいただけたからです。
令和2年7月の豪雨によって、中山道・大湫宿の街道筋にあった町のシンボル、御神木の大杉が倒れる被害が発生しました。
町民にとって心の拠り所だったこの大きな木を、「記憶や記録、形として残していきたい」という思いからこのクラウドファンディングが立ち上げられました。(この募集は2020年12月20日に終了、288人の支援者が集いました。)
滞在制作をはじめて今日で七日(2021年4月2日現在)。
この旧お茶工場だった作業場には、
大湫に暮らす方、
神明大杉やこの被災復興の動きを取材している方、
クラウドファンディングに関わる方、
大湫宿にやってきた旅人、通行人、
毎日さまざまな方が作業場に立ち寄ってくださいます。
もちろん大杉や作品制作についての話となることが多いのですが、大湫という色濃い歴史文化と美しい景観に囲まれた土地ならではの、フィールドワークゴコロくすぐられるお喋りもたくさん飛び出してきます。
今回はそんな話にうずうずしてオープンアトリエの時間の前に早起きして巡った大湫周辺のフィールドワークをレポしたいと思います。
お借りしているイカした自転車。
ちょいと右に傾いたエルビーのカゴが、ご愛嬌。車体横に“なまえ“と“ところ“を書く欄があります。坂道には弱いです。
●大湫宿さんぽ
江戸時代に整備された五街道の一つ「中山道(なかせんどう)」は、江戸の日本橋と京都の三条大橋を結ぶ街道です。
江戸と京都以外には、現在の埼玉県・群馬県・長野県・岐阜県・滋賀県を通り、長野県南西部の木曽地域も通っていたことから「木曽路」とも呼ばれています。約540㎞ある中山道には69ヶ所の宿場が設けられ、五街道の中では最も多い宿場の数です。
岐阜県瑞浪市に位置する「中山道 大湫(おおくて)宿」。海抜510mの高地に設けられたため、旅人たちから難所とされていました。
本陣は明治時代に小学校になってしまい(この校舎も取り壊され、今は記念碑がのこり)ましたが、脇本陣は今も健在です。
大湫宿とその周辺の位置関係です。
難病平癒(特に足の病)や道中加護のご利益があると言われています。観音堂の絵天井は、弘化4年(1847年)、恵那郡付知村の画人三尾静(暁峰)の作。公開されている訳ではないのですが、花鳥草木を主に描いた可愛い板絵60枚が扉のガラス越しにのぞけます。
● 大湫(大久手)宿~細久手宿の方面へ
滞在4日目の3月29日。
大湫宿(大久手宿)~細久手(ほそくて)宿(江戸から48番目の宿/岐阜県瑞浪市)
の方面、『琵琶峠』へ。
八瀬沢の一里塚の隣にひっそり置かれていた石。おもての点線状の痕跡は案内によると、『矢穴』と呼ばれるそうです。かつて、道路拡張のためにのみで石を割った跡。私の人差し指1本分の深さがありました。
ちょっと池を渡るように浮かぶ、小島のお堂が印象的でした。大湫宿と細久手宿の中間に位置します。「小さき池あり 杜若(かきつばた)生ひしげれり 池の中に弁財天の宮あり」(太田南畝『壬戌紀行』)
池の中腹にまでのびて、支えられている不思議な松を発見。
ところで、近所に住む方が「今朝、カモシカを見たよ」と写真を見せてくださったのですが…
カモシカ!?
あの、天然記念物にも指定されている?!
私もカモシカが見たい!
明日からは、カモシカを意識しつつ暮らそうと思います。
●水晶山と竜吟の滝
折り返し地点となる滞在5日目。3月30日は、山登りをしました。
水晶山という、近くに軽いハイキングが出来るような登山道があります。
海抜510mの高地に設けられた大湫宿側から登山道へ入ると、登山開始直後に山頂にたどり着けてしまいます。むしろ、名所の「竜吟の滝」を見に行くためにその後30分ほどの山下りがはじまります。
行きはよいよい、帰りはしんどい!
大学の校舎の階段、二段分くらいの高い段差の道が続き、30分後には帰るのを諦めそうになる自分に出会うこととなります。
ちょっと迷いながらたどり着いた、〈二の滝〉。滝は7つあるそうなのですが、アトリエのオープン時間が迫っているため、散歩はここまでです。そして、ここからが登山の始まりです。
2時間ほどの山散策でしたが、この日、ここでは大きな動物の気配はありませんでした。鳥はたーくさん鳴いているのですが。
近隣の方たちからのカモシカ目撃情報によると、朝や昼に静かなところ(山側〜住宅周りからちょっと離れたところ)付近で見た方が多いようです。
聞けば、ほぼみなさん、カモシカとの遭遇経験はあるそうな…
●大湫宿~大井宿の方面へ
滞在6日目。3月31日は、大湫から東の方へ。
旧中山道に沿って馬頭観音さま方が並ぶ、起伏の多い峠道を行きました。往時の道の面影を残しているような、未舗装のままの区間がかなりあるようです。
この日もカモシカとは出会えませんでした。
地蔵尊の横の石碑に「地蔵坂という坂を上れば右に大なる杉の木ありて地蔵菩薩にたたせ給う」(壬戌紀行)と、あります。
岩にぎゅうぎゅうに挟まった木がありました。横から見たら、ヒトの顔みたい。
奥の石積みの岩窟の中には道中安全を祈った、三十三の馬頭観音さまが。
観音さまの足元には、江戸、釜戸、土岐、神田など、色々な地名が外からのぞいて確認できます。大湫宿と大井宿の間の三里半(約13.5km)は、険しい山の中の坂が続き、中山道の難所のひとつでした。ここを行き交った人々の願いが残されています。
帰りの山道でイヌノフグリの見分け方を書いた紙を拾いました。(山では落とし物・忘れ物に注意しましょう。)
道端でよく見るオオイヌノフグリ以外にも、色々と見つけられるようです。5円玉の穴のサイズ(5mm)を基準に、私もイヌノフグリ探しに挑戦!しかし、朝からそんな沢山花なんて咲いているのかしら…
と、思いきや、群生してました。
●湖岸探索
滞在7日目。4月1日は竜吟湖へ。竜吟湖は5日目に行った水晶山の登山道を越えたところに位置します。
ここは人工湖です。気になる形の流木や石が落ちていました。
適当な大きさのものを見繕い、展覧会の会場に並べてみます。
アシスタントレポ第二弾は《大湫FW編》として、大湫周辺の様子をわたしなりにレポートさせていただきました。もちろん、毎日、制作もさせていただいております。
そういった出来事は、次のレポートにて!
では、大杉の木版画づくりに戻りたいと思います。
大杉の年輪を用いた版画制作を大湫町に滞在しながら行っています。
・滞在制作日時 :2021年3月26日(金)~4月4日(日)
・オープンアトリエ :2021年3月28日(日)~4月3日(土)10:00~17:00
・アーティストトーク:2021年3月28日(日)14:00~
・会場:大湫町 旧お茶工場
※会場が広いため人数制限は設けませんが、各自感染症対策をしてお越しください。会場入り口で検温と消毒をお願いいたします。
大湫町コミュニティ推進協議会WEBサイト
クラウドファンディングサービスサイトREADYFOR
:【令和2年7月豪雨】樹齢1300年の大杉被災復興プロジェクト(※2020年12月20日募集終了)
https://readyfor.jp/projects/okuteosugi
レポート:山田真実(地域実践領域 アシスタント)2021/04/02