湖から山へ、水の旅。地域実践領域フィールドワーク・多賀町ツアーに行ってきました🥾🥾(2025.10.4)
こんにちは!
すっかり秋になりましたね。
今年は先日まで夏日が続いていたのに、ここ数日で急に気温が下がり、一気に秋が深まったような感じですね。
急激な温度変化は体に負担をかけるので、体調にも注意が必要です。
さて、後期の地域実践領域2年生は、「山・里・川・湖・海のつながりをデザインする」をテーマに、琵琶湖という地域、素材を活用した制作に取り組みます。

水の流れをたどるバスツアーへ!🚍
10月の第1週の週末、
「それぞれのつながりを知るために」
そして「素材のルーツを知るために」、
私たちは水の流れをたどるバスツアーを開催しました。
訪れたのは、彦根市の南三ツ谷公園、
犬上郡多賀町にある金屋頭首工、
本学の仁連先生がサステイナブルにリノベーションされた犬上川上流の古民家別荘、
高取山ふれあい公園、
そして犬上川ダム。
湖から里、川、そして山へ——
水の流れに沿って移動しながら、地域の自然と人とのつながりを感じる1日となりました。
今回は、そのワンデイツアーの様子をレポートします!
去年の様子はこちら⇩
まず大学を出発し一行が向かったのは、彦根市の湖岸沿いにある緑地・南三ツ谷公園です。
こちらの公園は、湖岸でキャンプやBBQができるということで、人気があるようです。
この日はあいにくの小雨で必ずしも天気が良いとは言えませんでしたが、
5〜6ほどの家族や友人グループがBBQを楽しんでいました。
恐らくですが、私の観察眼とヒアリングが確かであると、私の夫の国籍と同じブラジル人のファミリーではないかと思います。
というのも、ブラジルでは週末必ず家族で集まってBBQ(シュラスコ)を楽しむ文化と習慣があり、よっぽどのことがない限りほぼ毎週行われます。(個人談)
余談ですが、滋賀県における外国人登録者数においてブラジル人は全体の20%ほどを占めていて、2番目に多いようです。
引用 令和6(2024)年12月31日
より

こちらでは30分ほど湖岸を歩いて、琵琶湖や浜辺の様子を観察したり、漂流物を採取したりしました。
鹿の顔の骨を見つけた人、面白い形の流木を見つけた人、綺麗なレイクガラスを見つけた人、など、
初っ端から面白いものを見つけてしまったが、持ち帰ろうか、置いていくか悩んだ挙句に、置いていくという決断をする学生もいました。

続きまして、
犬上郡多賀町の金屋頭首工です。
「かなやとうしゅこう」と読みます。
ここでワンポイントレッスン
頭首工とは?
「頭首工」というのは、川の水を田んぼや畑などで使うために、河川から用水路へ水を引き込むための施設のことです。
水をせき止める「堰(せき)」や、水の量を調整する水門など、いくつかの設備をまとめて「頭首工」と呼びます。
頭首工の大きな役割は、水をうまく利用できるようにすること。
さらに、雨がたくさん降って川の水が増えたときには、水の流れを調整して洪水を防ぐ働きもしてくれます。
よく似た施設に「ダム」がありますが、目的が少し違います。
ダムは水を「貯める」ことがメインなのに対して、頭首工は川の水を「引き入れる」ことが中心なんです。

バスに戻る前のちょっと嬉しいおやつタイム🍪
バスに戻る前、助教授の山田先生から「カントリーマ⚪︎ム」をいただきました。
時間は11時半ごろ。そろそろお腹も空いてきたころだったので、ありがたいタイミングです〜!
バスの中でさっそく開けてみると……
「あれ?クッキー、ちょっと小さくなってない!?」
ここ数年の原材料高騰の影響で話題になっている“ステルス値上げ”を、まさかここでで実感するとは思いませんでした。
仁連先生の古民家へ🏡
続いて向かったのは、仁連先生がサステイナブルにリノベーションされた古民家住宅です。
小雨が降るなか、先生が外で出迎えてくださいました。
まずは屋外の施設について説明してくださいます。
目に入ったのは、ずらりと並ぶ薪。
その理由は後ほど室内の見学で明らかに。
実はこのお宅では、お湯を沸かすのも、暖を取るのも、すべて薪を使っているんです。

太陽の力でお湯を沸かす☀️
お湯は、こちらの太陽熱を利用した「太陽熱温水器」でまかなわれています。
「太陽熱温水器」は、太陽の“熱”を利用してお湯を作るしくみ。
同じく太陽エネルギーを使う「太陽光発電」は“光”から電気を作るので、使うエネルギーの種類が少し違います。
この太陽熱温水器は、エネルギーの変換効率がとても高く、設置費用も比較的手ごろ。
まさに、身近で実践できるエコな仕組みです。
私も気になっているこちらの太陽熱温水器ー思い切ってお値段を聞いてみると、30万円前後だったそうです。
気になるお湯ですが、1年を通してほぼ安定的に熱〜いお湯が出るそうです。

田舎暮らしのエコな仕組みを見学して
お水は井戸から汲み上げた地下水を使い、そのまま太陽熱温水器に直結。温められたお湯はそのままお風呂へ運ばれます。
井戸水が太陽の熱で温められ、家の中でお湯として使われる――まさに自然の恵みをそのまま暮らしに取り入れた仕組みです。
仁連先生のお宅では、下水道だけは法律(下水道法)での接続が義務づけられているためつながっていますが、上水道や電気などのライフラインの管は接続していないそう。
まさに中村好文さんと吉田全作さんの著書『線(せん)と管(かん)をつながない 好文×全作の小屋づくり』を体現したようなお宅で、私も本は読んでいますが、実践にはまだ手が出せていないので、憧れが深まるばかりでした。
というわけで、機器の価格や使い心地など、気になることは片っ端から根掘り葉掘り聞いて回ったのでした。
薪ストーブのある暮らしに憧れて🔥
おうちの中も見せていただきました。
広々としたリビングには、存在感たっぷりの薪ストーブがどんと構えています。
暖房はこの一台だけ。もちろんエアコンはありません。
それでも部屋全体がしっかりと温まり、
薪のはぜる音ややさしいぬくもりが、なんとも心地いい空間をつくり出していました。
ストーブの上にお鍋ややかんを置いておけば、お湯を沸かしたり、ちょっとした料理をすることもできるそうです。
はあ〜……こんな暮らし、憧れがつきません。

次の目的地は「高取山ふれあい公園」へ🌲
もっとゆっくり(個人的に!)拝見したかった仁連先生のお宅を後にして、
私たちが次に向かったのは 高取山ふれあい公園 です。
高取山ふれあい公園は、多賀町の南西部に位置する、約86ヘクタールの山をまるごと公園にした緑豊かなキャンプ場。
「自然を学ぶ・自然を遊ぶ・自然を感じる」をテーマに、
単なるキャンプ場にとどまらない総合的な森林体験交流施設として、平成7年4月27日にオープンしました。
園内は山々に囲まれ、雑木林や杉林、湿原などが広がります。
その中では、さまざまな動植物を間近に感じながら、四季折々の自然とふれあうことができます。」
以上、
高取山ふれあい公園HPより引用
こちらでも、毎年お世話になっている大滝山林組合の田中さんから山と川と里と湖の関係についてのお話を聞きます。
その大事なレクチャーの前に、みんなでエネルギーチャージ!お待ちかねのランチタイムです🍛
事前に先生から「家カレー」に近いカレーライスと聞いていたのですが、
今回は本格タンドリーのバターチキンカレーでした。
付け合わせは、サラダと唐揚げです。
ご飯も付け合わせもたっぷりで、もちろんおかわりも自由。みんな本当にお腹いっぱいになりました。
やっぱり、みんなでワイワイ囲むご飯は格別ですね。
美味しいランチでパワー満タン!田中さんの貴重なお話もしっかりと拝聴します。
ご馳走様でした!

エネルギーチャージ出来たところで、別棟にあるレクチャールームに移動します。
ここでは、大滝山林組合の田中さんから山林組合のこと、高取山から先ほど見学した金屋頭首工の歴史のことを学びました。
手入れされた山林と禿山に見立てたペットボトルの鉢に同時に水を流すとどうなるか、を説明してくださいました。
もちろんみんなどうなるか予想はできていましたが、実際に目の当たりにするとイメージとしてインプットされますね。

「薪」を「炭」にするには、薪を「炭化」させることが必要です。
ただ薪に火をつけただけでは、酸素と結びついて燃え尽きてしまいます。炭を作る上で最も重要なのは、酸素を極力少ない状態にし、薪を「燃やしすぎない」ようにすることだそうです。
まさに、この原理を実現しているのが「炭窯(すみかま)」です。
学生たちが先ほど中を見学させていただいた炭窯では、薪を入れてから入り口を密閉し、窯の中を「蒸し焼き状態(無酸素状態に近い)」にすることで、良質な木炭を作り上げていました。
そして、驚くべきは、日本で木炭が燃料として使われ始めたのは縄文時代にまで遡るという史実です。
昔の人々の暮らしの知恵によって培われてきた炭化の技術のおかげで、私たちは今、バーベキューなどで長く安定した火力を保ち、調理を楽しめているのですね。技術のルーツを学ぶと、炭への見方が変わります!
さて、次は外を散策します。
こちらはすぐ近くにある薪などを保管している倉庫です。
その奥にあるのは、、、、?


中に入らせていただきました。

中は、光が入らないからと、煤で真っ黒でした。
そう、こちらは薪を炭にする「炭窯」なんです。
と、ここで田中さんが急遽、炭はどのように作られるのか?についてレクチャーしてくださいました。
普段BBQなどで使う炭ですが、そういえばどうやって作られるか、考えたことなかったです。

「薪」を「炭」にするには、薪を「炭化」させることが必要です。
ただ薪に火をつけただけでは、酸素と結びついて燃え尽きてしまいます。炭を作る上で最も重要なのは、酸素を極力少ない状態にし、薪を「燃やしすぎない」ようにすることだそうです。
まさに、この原理を実現しているのが「炭窯(すみかま)」です。
学生たちが先ほど中を見学させていただいた炭窯では、薪を入れてから入り口を密閉し、窯の中を「蒸し焼き状態(無酸素状態に近い)」にすることで、良質な木炭を作り上げます。
そして、驚くべきは、日本で木炭が燃料として使われ始めたのは縄文時代にまで遡るという史実です。
昔の人々の暮らしの知恵によって培われてきた炭化の技術のおかげで、私たちは今、バーベキューなどで長く安定した火力を保ち、調理を楽しめているのですね。
技術のルーツを学ぶと、炭への見方が変わります!
その後、山の方へ少し歩きました。
さてここで問題です。
こちらの4メートルの丸太は、1本いくらでしょうか?

– 3000円?
-8000円?
-2万5000円?
答えは、
300円!!!
「えー!」一同唖然。
芽が出て、この大きさになるまで成長した木、
森に入って、木を切り出して、ここまで運んできた人、
その対価として300円とは・・・
それでは林業に携わる人が減るのも無理はないと思いました。

そのような現状から、こちらの大滝山ふれあい公園内では、このような木材を利用した製品作りやワークショップを企画開催して、有効活用につなげています。
高取山ふれあい公園を、後にした私たちは最後目的地の
犬上川ダムへ。
今回のツアーは、琵琶湖岸からスタートし、水の流れをさかのぼり、ついに山の上にあるこのダムまでたどり着きました。まさに水の旅路を体感する一日でもあります。

この日、ダム湖を前にして、まず驚きの声が上がりました。
毎年この場所を訪れている先生方でさえ、「今までに例を見ない水位の低さだ」と口を揃えて驚かれていました。
普段は水に覆われているダム湖ですが、今回は夏の間の水不足からか水が引いたことで、
普段は足を踏み入れることのないダムの底付近が広範囲にわたり出現。
学生たちは、その広大な景色の中を歩いて散策するという、非常に珍しい体験をすることができました。



最後にダム底を散策していた時、一人の学生からポツリと出た
「ここはあんまり気持ちのいい場所じゃないな〜」という言葉が、個人的に強く印象に残りました。
彼が感じた違和感は、この場所の持つ複雑な背景を端的に表しているように思います。
- 本来は水の中にある土地であり、今は一時的に干上がっているだけの場所。
- さらにダム建設以前には、豊かな森や人々の集落がこの場所から消し去られました。
- そして、過去に農地用水を巡る争いが繰り広げられた末に、その解決のために造られたという歴史。
このダム底に立つことは、「人の営み」のために自然を切り出し、山林や水の流れを整備してきた私たちの足跡を、まざまざと見せつけられる経験でした。
今回の「水の旅」を通して、学生たちは美しい自然だけでなく、自然と人との関係の複雑さ、そしてその場所が背負う歴史まで、しっかりと持ち帰ってくれたようです。
このツアーで見たこと聞いたことを、今後の制作活動に繋げていってほしいです。

それではまた!

アシスタント吉村佑花里
(写真はご近所さんに貰ったアケビ)