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「地域の素材でつくる2」

「地域の素材でつくる2」

「地域の素材でつくる2」が11月26日よりスタートしました。

琵琶湖流域、水系の流木の利活用から作品制作した「地域の素材でつくる」に続く地域実践演習4の授業になります。

今回は高島市安曇川町中野を拠点に活動するエーゼロ株式会社高島しこぶち事業所,ホトラ舎(農福連携事業)と連携しながら学んでいきます。

〜場所について〜

エーゼロ株式会社高島しこぶち事業所,ホトラ舎の拠点である中野太山寺及び泰山寺地区は、戦後間もなく食糧難と離職難の対策として国の要請を受け、開拓が始まった土地です。

昭和29年には大根の生産に成功。35年には約50ヘクタールもの農地が広がり、県内屈指の農業地帯となりました。しかし、50年代を過ぎると世帯の減少が見られるようになり、今日では農業放棄地の増加、跡継ぎ不足の問題を抱えています。

〜エーゼロ株式会社高島しこぶち事業所、ホトラ舎について〜

エーゼロとは?森の土の表面にある腐葉土層を森林生態学の用語で「A0(エーゼロ)層」と言います。

A0層が豊かであれば土壌がしっかりと生き、川が守られる。生命が育むための大切な層です。地域経済を醸す「地域にとってのA0層」でありたい。そんな願いが込められています。

「ホトラ」は農地の発酵肥料として活用された広葉樹の幼樹のことを言います。ホトラ舎は人と自然をつなぎ、地域の経済循環を支える役割を目指し、また、「一人でも多くの人が自分本来の力を発揮できる場」を目指した就労継続支援B型事務所となっています。「エーゼロ」「ホトラ」は、いずれも土壌を醸す意味が込められています。

推奨文献:ローカルベンチャー 地域にはビジネスの可能性があふれている

牧 大介 著 木楽舎 2018年7月2日発行

 

エーゼロの試み及び方向性が示させてれいる一冊。エーゼロ高島しこぶち事業所清水所長も紹介されている。

 

2年生たちは、6週間に渡って教えを請いながら地域の素材を活かした新たなアイデアを提案していきます。

初日はエーゼロ株式会社高島しこぶち事業所の事業の一つである宿泊施設、山里暮らし交房 「風結い」にてガイダンスを行いました。所長の清水安治さんに「エーゼロ」「ホトラ舎」の取り組みについてお話ししてもらった後、今後のスケジュールや目標について話し合いました。ここでの仕事のあり方として、栽培、収穫、管理、包装、販売などのプロセスを体験し、フローを学び、流れをイメージしながら素材を活用したアイデア、企画の提案及び実践にチャレンジしていきます。

12月3日(火)大学を出発した時は晴れ時々曇りの天気でしたが、中野太山寺につくと時雨れていました。北陸の気候影響がこの地域はあるようです。

短時間でありますが、いよいよ今日から農福連携及び林業の体験授業が始まります。

現在の主な活動は、農業では大根栽培、林業ではホダ木の管理から椎茸栽培に取り組んでおられます。3日は泰山寺地区まで歩き、大根収穫と洗浄作業の体験を行いました。

大根の収穫は出荷先によって様々であり、程よい大きさや形を見計らって必要な分だけを収穫をするというものでした。今日は漬物などの加工食品に使用する大きめ太めの大根を収穫しました。

洗浄作業ではホトラ舎の方々に洗浄方法を教わりながら、「目的と狙いを持つことや今できることは何か?」など、作業しながらイメージすることができました。

12月10日(火)快晴。高島市安曇川町 エーゼロ株式会社高島しこぶち事業所、ホトラ舎での授業3回目になります。

風結い(古民家再生宿泊施設:授業の拠点)にて林業体験と椎茸栽培の流れを清水さんからレクチャーを受けると、早々に山へ移動しました。

車で10分程度、山林に入ると、別荘地の一角にホダ木が数百本、90センチ程度に切られ整然と並んでいます。

ここの林には、コナラ、クヌギ、松、桜など、様々な種類の木が生えていると清水さんに教わりました。

椎茸のホダ木になるのは、コナラやクヌギです。チェーンソーを使って清水さんがコナラの木を一本切り、学生は90センチほどに切断された原木を運び出す作業を体験しました。

ここでは、平地作業で移動も数メートルでしたが、これが山の斜面や足場の悪ところ、天気など、様々な自然条件での作業を想像すると、大変さがじわじわと伝わってきます。

 

軽トラの荷台に原木を乗せていき、山裾の作業場まで下ろしました。作業場では、持ち込んだホダ木を専用のドリルを使って穴を開け、菌打ちの準備までを体験しました。

菌打ちを終えたホダ木は森の入り口に運ばれるものと、ハウスに運ばれるものがあります。

先週大根の洗浄作業を行なった泰山寺集落の中心地まで歩いて移動すると、大根を洗浄していた場所に今度は椎茸の原木が水に浸かっていました。これは、菌打ちされた原木に刺激を与えて椎茸の成長を促進させているのだそうです。

他にも、「音を立てる」、「叩いてみる」など、何らかの刺激を与えて促進させることが清水さんの説明から明らかになりました。

また、パッキング作業もここで行われており、先週と作業が様変わりしていることに気づきました。

 

次に隣のハウスへ移動しました。そこには3000本ほどの椎茸のホダ木が整然と並び、あちらこちらからこんもりと良い形の椎茸が生えていることが確認できました。一定の温度と湿度が椎茸栽培では大事であることからハウス内は外よりもかなり暖かいように感じました。

現在は様々なパターンで椎茸栽培に取り組んでいるとのことで、丸っこい物から大振りなものまで、今すぐ食べたくなるような立派な椎茸をみることができました。

 

最後に風結いに戻って体験を振り返り、質問やわからないこと、気づきなどの対話の時間を過ごしました。

先週の大根と今週の椎茸。同じ作業場で段取りや手順、また出荷の数などを計算して必要なだけの作業を効率よく取り組んでいることが想像できました。

我々はその一部始終をくまなく見せていただくことができた上で、これらの素材(自然資本)を活用してどのような新たなアイデアを生み出せるでしょうか?

学生からは素材を生かした料理、レシピ、といったモノから体験のプロセスを提供するツーリズム、アーティストインレジデンスなどのコト、サービスなどの意見が少しずつ出てきました。

12月17日(火)雨、エーゼロ高島しこぶち事業所、ホトラ舎との4日目授業は販路調査です。

安曇川駅から琵琶湖側へ15分程度歩いたところに位置する「藤樹の里あどがわ」道の駅で清水さんと合流しました。

ここは京都山科からつづく湖西道路、国道161号線沿いに位置しており、北陸方面との結節点でもあることから、現代における交通の要衝といえる場所です。

近隣には高島市立会館藤樹の里文化芸術会館があり、南東方向の少し離れた集落内には江戸初期の陽明学者、中江藤樹の出身地と功績を今に伝える藤樹書院があります。

道の駅には地域の農作物や加工食品、手工芸品などが販売され、歴史文化を背景にした観光の拠点でもあります。

国道161号線を挟んで向かい側には滋賀県の大手スーパーマーケットである平和堂安曇川店、その他飲食、書店が並び、地域住民が普段買い物をする場として賑わっている場所です。

まず、道の駅内にて並べられる農作物などの商品を見ることから始まりました。

先週の授業で栽培過程を学んだ椎茸が売られていました。生産者シールに生産地:ホトラ舎とあり、生産者が直接ここへ運んできていることがわかります。

施設内には講義室が設けられており、そこで清水さんと本日の狙いや目的などの確認から授業は始まりました。

普段何気なく近所のスーパーに買い物へ行く消費者目線から、今回は生産者目線で売り場の状況を見ることとなります。客層によってニーズが変わることから、道の駅とスーパーでの売り方の違い、客層の違いなど、調査項目の予測を立て、それぞれをめぐることにしました。

 

道の駅では生産者が持ちこみ、商材を棚に陳列する。農作物に関して当日の売れ残りは全て生産者が引き上げる仕組みになっているとのことです。

生産者の心意気やメッセージが伝わるお手製の宣伝などが掲示され、生産者が近いことが伝わってきます。また値段設定も生産者自身が決めるなど、清水さんから細かい情報を調査しながら得ることができました。

 

道の駅内には地域の素材を使ったレストラン「安曇川キッチン」が併設されています。

店主に少しお話を伺うと、地元の湧水「針江の生水」を地元の農家さんに毎日汲んで来てもらい、十割蕎麦をその水でうっているとのことでした。

「ファストフードの販売方法でスローフードを提供する!」と、誰にもできないチャレンジをされている、「安曇川キッチン」は、本学に併設している「カフェテリア結」のグループ「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」が営んでいます。

「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」は他にも毎週通っている泰山寺の畑の隣に広大なブルーベリー畑を栽培し、「ソラノネ食堂」を展開しておられる、6次産業のパイオニアです。

 

次に161号線を挟んで向かい側にある平和堂安曇川店に行ってみました。

入り口から立体的でみやすい農産物のレイアウトに驚きます。膝下位置、腰の位置、目の高さ、など様々な高さにわかりやすく並んでいます。

普段何気なく見ていますが、顧客目線を意識し、購買欲を促す意図が組まれていることに気づきます。値段表示も一目でわかるし、農作物の大きさが一定で同じ方向に並べています。さらに顧客の導線確保がされ効率よく商材をみることができます。椎茸は小ぶりで家庭用の大きさに厳選されていました。土付きのねぎを丁寧に包装して魅せている。などの工夫が行き届いており、売り方の意図がコントロールされていることに改めて気付きます。

前者後者どちらが良いか?ということではなく、消費者のニーズによって大きく違うことを実感、体感する瞬間であり、短い時間ではありましたが多くの収穫がありました。

道の駅講義室に戻ってから、清水さんへの質問時間では様々な質問が出てきました。

ここではプロダクトアウト、マーケットインというワードを改めて認識することになりました。双方を同時に見ることで繰り返しになりますが、二元論での優劣ではないことがわかってきました。

その中で学生は「現時点で何ができるか?」アイデアのしぼりだしを試みました。学生からは「売り場を畑にしてはどうか?」という思いつきとも呼べる意見が飛び出しましたが、清水氏は「むしろ振れ幅の大きいアイデアの方が可能性があるかもしれない!」との返答をいただきました。

栽培、収穫、保存、管理、包装、販売の一連を体験することで素材の持つ可能性を想像する。「地域の素材でつくる2」はいよいよアイデア出し、プランニングへと移っていきます。

次回は個々の意見、アイデアを持ち寄り、学生間でよりそのアイデアの有効性を高めた上、清水さんとの対話を予定しています。年明けまでの宿題として道の駅を後にしました。

毎回濃い内容を体験し、その場で振り返って考えることができています。通常作業がプログラミングされている中、我々の学びの時間を設定しているエーゼロ高島しこぶち事業所所長の清水安治さんに、心から感謝申し上げます。

レポート:石川亮(地域実践領域 准教授)

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