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フィールドワーク授業担当 石川 亮先生の地域をめぐる話

フィールドワーク授業担当 石川 亮先生の地域をめぐる話

現場は発見と仰天の連続!
フィールドワークを続けていると、想定外の着地点に到達する。

私は美術作家として「個と全体」を表現することが、作品をつくる一つの動機になっています。10年前、知り合いの紹介でスイス・ジュネーブのレマン湖の近くで「水」をテーマに展示をしたのですが、私は考えた末、琵琶湖の水を汲んでスイスへ持っていき、レマン湖の水と琵琶湖の水、どちらも氷にし、溶けていくのを見せるという作品をつくりました。それぞれの水の背景に歴史や文化があるけれど、一緒になって溶けるとただの水になる。理論的にも物質的にも、唯一無二のものがただの水になっていく過程を見せることで、「個と全体」への思いを表現しました。
その展示をきっかけに、私は琵琶湖でその表現ができないかと考えはじめました。早速琵琶湖に流れこむ川の水源を調べていくと、80ヶ所もの情報に辿りつき、湧き水を汲みに現地へ。そこで遭遇したのは、古から神として崇められている水源や、歴史的な人物との縁や伝説が残っている水源など、知られざる滋賀県の歴史文化でした。そしてある時大学の先生から、私がやっていることは滋賀県の文化を掘り起こすことだと言われ、目からウロコが落ちました。美術の視点からスタートしたことが、哲学や人類学、民族学にスイッチし、湧き水を調べることでさまざまな分野を横断していたのです。自分では想定もしていなかったことが、フィールドでは起こる。地域実践領域での学びは、知的好奇心をくすぐる出会いの連続なのだと思います。

滋賀県長浜市菅山寺境内にある弘法の水(こうぼうのみず)は全国に数ある弘法大師伝説の一つが残る。山麓から山中の寺へ行くまで四国88箇所霊場巡りの写しが祀られ、その最終地点と思われるところに湧水と小さな弘法大師像がある。

石川 亮 准教授 Ryo Ishikawa
美術家、アートディレクター。2015年よりビワパールまるごとブランディング事業に携わる。近年は国内の神仏にゆかりのある地に出向き、その場所の持つ性質やルーツを探ることが作品制作の糸口になっている。『自然学-来るべき美学のために-』(2012年滋賀県立近代美術館)、『SHIZENGAKU』(2013年「ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ」)、『森のちから-森へ行こう-』(2014年「アーティスト・イン・レジデンス」和歌山県串本町潮岬)など、国内外での個展、グループ展多数。

《学位》
京都精華大学美術学部(現:芸術学部) 造形学科卒業(芸術学士)

http://www.seian.ac.jp/dept/teacher/29030

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